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最高裁が賞与と退職金の格差を認めなかった3つの理由

労働法令
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2020年に結審した同一労働同一賃金を巡る訴訟において、最高裁判所は各種手当については有期契約労働者の主張をほぼ認めるような判決を下したものの、賞与や退職金については格差を認めませんでした。

なぜそのような判断になったのか。最高裁は「正社員人材確保論」を背景に3つの理由を挙げています。

基本給が職能給である

正社員の基本給が、スキルや能力で評価される職能給となっているかどうかがポイントとなりました。

職能給は在籍年数が長く、優れた人ほど高く評価される仕組みですから、優秀な人材を確保、定着させるメリットがあります。

賞与は基本給の○ヶ月分、退職金は基本給×勤続年数と基本給をベースにしているのが一般的で、つまり基本給の後払い的な性格、功労報償という目的で支給されるのが賞与と退職金であることから、職能給のない有期雇用にこれらを支給しないのは不合理ではないとしたのです。

人事異動がある

配置転換、職種転換をしながら長期的に人材を育成するシステムが整っているかどうかがポイントになりました。

企業の発展のためには人材を育成し、確保、定着させることが必要不可欠で、そのために幅広い業務に携わらせていく正社員とは違い、有期雇用は局所的に配置されていくものであることから、賞与や退職金に格差があっても不合理とまでは言えないと結論付けました。

正社員登用制度がある

正社員登用制度という正社員への門戸が開かれた環境の中で、頑張って正社員になった人を厚遇するのは当然ですよねという見解です。

ただし、実際に正社員登用した実績が相当数あることが前提で、形式的に設けているだけではダメと付け加えています。

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以上が最高裁の判決の根拠ですが、裏を返せば、正社員の基本給が職能給で決められていなかったり、人事ローテーションを行っていない、正社員登用制度がない、ということが1つでも該当する職場環境にある方は、今回のような有期雇用が一方的に不利になるような判決にならない可能性はあるといえるでしょう。

また、例えば有期雇用が携わっている業務と全く同じ業務に正社員が配置されていて、なおかつ長期にわたり(概ね5年以上)勤務しているような有期雇用のケースなど、個別の状況に応じて新たな判例が生まれる可能性は十分あります。

まだまだ流動的な同一労働同一賃金問題、今後も注目していきたいと思います。