iDeCoは運用益が非課税というメリットがある一方で、選んだ投資信託が元本割れしてしまう可能性もあります。
元本割れが怖いからと元本確保型のみの資産を選択する方法もありますが、日銀がインフレ政策を止めない限り貨幣価値は緩やかに下がり続けます。元本確保型の運用利回りは0~1%が約半数を占めているのに対し、日銀は毎年2%以上の消費者物価の上昇を推し進めているため、保有資産の価値は目減りしてしまうのです。
これもある意味元本割れと呼べるわけで、投資の著名人がこぞって元本確保型をすすめないのはこういった背景があります。それでも元本割れする可能性がある投資信託に対し不安が拭えないという方は少なくないでしょう。
元本割れリスクに備えるためにはどういった対処法があるのか、投資のセオリーをもとにご説明します。
※参考:iDeCoってなに?
慌てて売るのは厳禁
金融機関のサイトにログインして得られるiDeCo口座の運用状況や、定期的に送られてくるiDeCo運用報告書によって自分の資産が元本割れしている事実が発覚してしまったら、ほとんどの人は精神的ダメージを負います。
投資経験が豊富な方でさえ動揺してしまいますから、投資初心者の方のショックは計り知れないものがあるでしょう。
元本割れしたら正常な判断ができなくなってしまい、「売らなければ」という心理が強く働き、慌てふためいて売りに走る人が増えます。これを業界用語で“パニック売り”と言うのですが、これは非常におすすめできない行為です。
市場が回復するまで待つ
株式と違い、値動きが穏やかな投資信託が元本割れする理由の多くは、株式市場全体が落ち込んでいるケースです。
バブル崩壊、リーマンショック、そして現在のコロナショックなどにより、市場はときに大暴落してしまうこともありますが、その都度乗り越え、回復してきました。元本割れしたからと売却してしまったら、市場が回復して値上がりした際の利益を逃すことになります。
慌てることなく、どっしりと構えて状況を見極め、冷静に現状を分析する心持ちでいるようにしましょう。ジタバタしないでじっと待つ、そんな心構えが大事です。
元本割れ防御策で有効「ドルコスト平均法」
市場は回復すると言われても不安な方はおられるでしょう。確かに今後も同じように回復するとは限りませんから。そこで元本割れへの備えとして最も効果的な「ドルコスト平均法」をご紹介します。
ドルコスト平均法とは、毎回同じ投資金額に設定して、下落時にたくさん購入し、上昇時には少なく購入する手法です。平均購入コストが下がるため、元本割れ時の損失を抑え、値上がり時には利益が大きくなるという効果があります。
特にiDeCoのような長期間の積立てにこそ、その効果が存分に発揮されますから、ドルコスト平均法による積立投資が元本割れをカバーする最も有効な手段と覚えておきましょう。
一時的に元本割れはしたとしても、長い運用期間の間のほんの一部分の出来事と割り切って、動じることなく長期的展望に立って運用を続けていくことが大切です。
資産配分の見直しも視野に
ドルコスト平均法による長期の積み立てを続けていても元本割れを長きに渡り解消できなかったり、急に相場が荒れて回復見込みまで待てないという事態になってしまったら、アセットアロケーションを検討してみましょう。
アセットアロケーションとは、資産(アセット)の配分(アロケーション)を見直すというものです。
iDeCoの商品には、投資信託の他、預貯金や保険商品といった元本確保型の資産も用意されています。元本確保型の資産割合を増やしてiDeCo資産を守りつつ、市場の様子を見るということもひとつの方法です。
ただし、iDeCoには毎月管理手数料が発生するため、元本確保型だけでは運用益が伸びませんから、ある程度のリスク性資産は残しておきたいものです。
また元本確保型のうち保険商品は満期まで保有しないと解約手数料がかかり元本割れになる可能性が高いため、一旦選択した場合は満期まで変更できないということを覚えておきましょう。
アセットアロケーションには、「スイッチング」と「配分変更」があります。
スイッチングとは、すでに積み立てていた資産の割合を変更することです。つまり今の商品の全部または一部を売却して、新しい商品を購入していきます。
それに対し配分変更とは、今後積み立てていく商品の割合を変更することです。つまりこれから積み立てようとする商品の変更を行なったり、その比率を変えたりします。
どちらを選択するかは、金融機関の窓口に相談しながら決めていくといいでしょう。
定期的にiDeCo資産をチェックしましょう
最初に掛金や投資先を設定したあと、そのまま放置してしまうという方が意外に多いようです。
ですが運用益が想定より伸びていないことに気付かなかったり、思いもよらぬリスクに直面したりしている可能性もあります。
かといって頻繁にチェックして本業が疎かになってしまうのも本末転倒ですから、iDeCoから1年に1回送られてくる運用報告書を最低限チェックするようにしましょう。
現在の運用状況や今後の目標を確認することで、たとえ元本割れに遭遇しても慌てることはありません。できれば半年に1回、最低でも1年に1回は資産状況の確認とメンテナンスを行なってみてください。
※参考:iDeCoの会社比較
iDeCoの元本割れをカバーする対策まとめ
「元本割れ」は響き的にもよくなく、嬉しくないワードです。とはいえ運用益を追求するためには避けては通れないものでもあります。
今回ご紹介した対策法を参考にしながら、ご自身のiDeCo資産を守りつつ、運用益を増やしていきましょう。