多くの人にとって老後の生活が公的年金だけでは立ち行かない時代。安定した老後資産の確保のためにiDeCoは最適です。
定年後の充実したリタイア生活を夢見ながら、iDeCoの運用を楽しんでいる方もいるでしょう。ですが何が起きるかわからないのが人生。運用途中で亡くなることだってあるかもしれません。
もしそうなってしまったら運用していたiDeCo資産はどうなってしまうのでしょう?そんなセカンドライフを迎える前に加入者が亡くなったケースについて、解説していきます。
※参考:iDeCoの基本
iDeCoの加入途中に死亡した場合は、遺族に死亡一時金を支給
iDeCoを軽くおさらいしておきますと、メリットとして掛金の全額所得控除、運用益の非課税、受給時の所得控除という3つの税の優遇措置があり、デメリットとして原則60歳まで引き出すことができないことが挙げられます。
もし加入者が途中で亡くなってしまったら、「死亡一時金」として遺族に支給されることになります。また死亡一時金はみなし相続財産として扱われ、相続税の対象になります。
iDeCoには60歳から受け取れる「老齢給付金」しかないと思われがちですが、老齢給付金以外にも先に説明した「死亡一時金」や、加入者が70歳になる前に疾病により一定以上の障害状態となり、1年6ヶ月後に請求できる「障害給付金」の全部で3種類の給付があります。
iDeCoの死亡一時金の金額は、原則として残された個人別管理資産相当額になります。つまり加入者が生存時に支払った掛金とその運用益になり、生命保険のように手厚い保障額となってもらえるものではありません。
投資信託を商品として選択していた場合は、死亡時の時価ではなく、遺族が請求手続きを行ってiDeCoの窓口である証券会社、銀行など(運営管理機関)が売却した日の時価になります。請求者が任意の日を指定することはできません。
死亡一時金の請求について
iDeCoの加入者が死亡した場合は、加入者の遺族がiDeCo口座のある運営管理機関に資産残高の請求を行います。
手続きに必要な書類は、「裁定請求書」に「死亡診断書」とiDeCo加入者と遺族の関係性が証明できる「戸籍謄本」などを添付して、運営管理機関に提出することになります。詳しくは口座のある運営管理機関にお問い合わせください。
死亡一時金を請求できる遺族の範囲や優先順位は法令で定められています。あらかじめ加入者が受取人を指定することもでき、その場合は優先順位は適用されません(受取人に指定された者は遺族の範囲内に限ります)。
指定がなかった場合の優先順位は以下のとおりで、最も先順位の遺族のみが受給できます。
第1順位:配偶者(事実婚を含む)
第2順位:子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、死亡の当時、その収入によって生計を維持していた者
第3順位:第2順位に掲げる者のほか、死亡の当時、主としてその収入によって生計を維持していた親族
第4順位:子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、第2順位に該当しない者
第2順位と第4順位の中の優先順位については、まさに書かれている順番どおりで、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹の順に優先されます。また、例えば子どもが2人、父母など同順位に2人以上該当者がいる場合には、その人数で均等に配分されます。
iDeCoの加入にあたり知っておくこと
死亡一時金の請求期限は死亡時から5年です。みなし相続財産として、非課税(500万円×法定相続人の数)の税制優遇措置が受けられます。5年を過ぎると相続人のいない相続財産とみなされ国庫に帰属されてしまいます。
ですから遺族が確実に死亡一時金を受け取ることができるように、iDeCoに加入している事実やiDeCo口座のある金融機関をあらかじめ家族に説明しておく必要があります。
第2の人生のために準備しているiDeCoですから、自分が死んだ場合を想定して行動するのは少なからず抵抗があるかもしれませんが、「転ばぬ先の杖」という言葉もあるとおり、あらゆる事態を想定して備えておくことが大切です。
※参考:iDeCoネット証券比較
iDeCoの死亡一時金まとめ
iDeCoの加入途中で亡くなってしまった場合について解説してきました。
遺族基礎年金では原則として18歳未満の子どもがいないと誰も受給できない、つまり掛け捨てが起きてしまいますが、iDeCoの死亡一時金は5年以内に遺族が請求すれば必ずもらえるものです。
終活を考える年齢でない限り、自分の万が一のことなど考えたくない気持ちもわかりますが、せっかくの運用資産を大切な家族に確実に渡すためにiDeCoのことはあらかじめ家族に話しておきましょう。