残業代不払い問題が急増したあたりから固定残業代制を導入する企業が多くなりました。固定残業時間について巷では40時間、45時間、60時間など様々な見解がありますが、法令や通達、判例を参考に最適と思われる時間について解説していきます。
固定残業代の上限は45時間以内が望ましい
固定残業代の時間上限は法律で定められてはいませんが、結論から申しますと「45時間以内」に設定するのが今の時代の潮流です。その理由について3つの観点からご説明します。
労働基準法の観点から
労働基準法では残業時間の上限を第36条において、あくまで原則ですが月45時間以内と定められており、この基準が一つの目安になります。実際、この条文に則ったかたちと思われますが、ハローワークや就活サイトの求人票では45時間以内に収めている企業が大半です。
通達から
厚生労働省労働基準局長が平成13年12月12日付けで都道府県労働局長宛に発出した通達(基発第1063号)には、「月45時間以上の時間外労働の長期継続が健康を害するおそれがある」と明記されています。この通達が実際の裁判に影響を与えていることからもその重要性がうかがえます。
判例から
45時間を超える固定残業設定を無効とした判例をご紹介します。
ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件(平成24年10月19日)
固定残業を95時間に設定していた企業に対し、札幌高等裁判所は45時間分を超える通常残業及び深夜残業に対して時間外賃金の支払いを命じた。
穂波事件(平成27年10月22日)
固定残業を83時間に設定していた企業に対し、岐阜地方裁判所は「異常」と断罪した。
まとめ
- 法令、通達、判例を鑑みても固定残業時間は45時間以内にするのが無難。万が一労働紛争が起きた際のリスクヘッジにもなる。
- 過労死ラインのひとつである80時間以上は、労働紛争になると企業が負ける公算大。
- 世間的に45時間以内で設定している企業が多く、その時間が増すごとに外部からブラック企業と思われやすくなる。社内的にも従業員のモチベーションの低下を招きやすくなる。