iDeCoは国民一人ひとりが自助努力により老後資金を貯めてもらうために国が用意した私的年金であり、様々な税の優遇措置が用意されています。「自分年金作り」には最適な制度になっており、他の積立、運用よりはるかにメリットがあります。
住宅ローン控除は、住宅の購入などで金融機関等から借り入れた金利負担の軽減を図り、所得税の負担を軽減してくれる制度です。
これら2つの制度を同時に受けることもできますが、両者を併用することで弊害が起きる可能性もあります。
そこで両者を併用する場合の注意点について解説していきます。
※参考:iDeCoの基本
iDeCoの税の優遇とは
これまでもiDeCoの節税メリットについて、様々な記事でご紹介してきましたが、今一度復習の意味も込めておさらいしていきましょう。
iDeCoと住宅ローン控除のそれぞれの税の優遇制度の仕組みを理解することができれば、自ずと結論が見えてきます。
iDeCoの税の優遇措置としては、掛金の全額所得控除、運用益の全額非課税、受給時の所得控除の3つが挙げられます。この3つの節税メリットを享受しながら、老後の資産形成を図っていくというものでした。
住宅ローン控除の税の優遇とは
iDeCoは所得控除に対し、住宅ローン控除は税額控除になります。つまり、所得控除は税率を掛ける前の段階で引かれるもので、税額控除は税率を掛けた後に引かれるという違いがあります。
当然、税額控除のほうが節税効果が高く、内容を大まかに説明すると、住宅ローンの年末残高の1%が所得税から控除される制度です。また所得税で控除しきれない分は、翌年度の住民税からも一部控除できます。
iDeCoと住宅ローン控除の併用の有効性は?
結論から申しますと、iDeCoと住宅ローン控除の併用は有効です。ただし、併用することで住宅ローン控除の節税効果を100%享受できない可能性はあります。
つまりiDeCoの掛け金が全額所得控除されることにより、住宅ローン控除で引くことのできた税額をすべて使い切れないケースが往々にしてありえることです。
使い切れないと「iDeCoのために住宅ローン控除の恩恵を最大限受けられない。」と、もったいない気持ちが生まれてしまうかもしれません。
ですが、住宅ローン控除を使い切れなくとも損をするわけではありませんから、住宅ローン控除を使い切るためにiDeCoを抑えてしまい、結果として老後資産の形成に支障が出てしまうことになっては本末転倒です。
住宅ローン控除が使い切れない場合は他にも、課税所得が少なかったり、扶養控除や医療費控除といった所得控除の額が大きいときに起こりえます。住宅ローンの借入残高が大きい場合や、iDeCoの掛金が大きい場合も起こりえるでしょう。
一番可能性が高いケースとしては、同じ税額控除である「ふるさと納税」と併用した場合が考えられます。
このように様々な所得控除、税額控除を組み合わせると住宅ローン控除の節税効果を最大限享受できない場合が出てきますが、iDeCoは拠出時以外にも運用時や受給時に節税メリットがあるため、住宅ローン控除との兼ね合いでiDeCoの掛金を減らすことがないようにしたいものです。
住宅ローン控除との併用まとめ
住宅ローン控除を使い切れなくとも損をするわけではありませんので、iDeCoと併用する際に掛金の額を調整する必要はないことがお分かりになったかと思います。
それでも気になるというなら、住宅ローンの繰り上げ返済を検討するのもひとつの手です。住宅ローン控除の額は減りますが、ローン残債が減ることで老後のライフプランに多少なれど余裕が生まれますし、何より借金自体がストレスになってしまうような方にはおすすめです。
※参考:iDeCoのネット証券比較